東京高等裁判所 昭和40年(ネ)2209号 判決
一、控訴人の被控訴人李に対する請求について。
本件記録ならびに当審証人臼井久の証言、当審における被控訴人李淳東の本人尋問の結果および当審証人鎌形寛之の証言の一部によれば、原審における全口頭弁論期日において被控訴人李の代理人として訴訟を追行した弁護士鎌形寛之は同被控訴人の訴訟委任を受けたものでないことが認められる(これに反する当審証人鎌形寛之の証言部分は前示各証拠と対比して採用できない。鎌形弁護士が原審に提出した訴訟委任状中の被控訴人李名義の署名押印は偽造にかかるものと認められる。)。したがつて、同弁護士のした当該訴訟行為は被控訴人李に対して効力を生じないし、原審の訴訟手続には同被控訴人に対する関係部分について重大な法律違反があるものといわなければならないので、原判決中被控訴人李に対する関係部分は取消を免れないことになる。もつとも、当審における同被控訴人の弁論その他一切の応訴態度からみて、本件のうち同被控訴人に対する関係部分を原審に差し戻してさらに第一審の審判をさせる必要は認められないから、控訴人の同被控訴人に対する請求の当否については当審において判断することとする。
控訴人主張の請求原因事実については、被控訴人李においてすべてこれを認めて争わないところ、右事実によれば、控訴人の被控訴人李に対する本訴請求は正当として認容すべきである。
(桑原 高津 浜)
註、第一 控訴代理人の主張
(原審訴訟手続の違法)
二、原審においては、被控訴人李の訴訟代理人として弁護士鎌形寛之が訴訟を追行し、それに基づいて原判決が言い渡されたのであるが、被控訴人李は鎌形弁護士に対し訴訟を委任したことはない。したがつて、原判決は、被控訴人李に対する関係で適法な訴訟代理権のない者の訴訟追行を看過してなされた違法があり、取り消されるべきである。
第二被控訴人李の主張
控訴人の主張事実をすべて認める。被控訴人李は本件建物を買い受けたことはなく、控訴人主張の登記に関与したこともない。原審において無権代理人鎌形弁護士のした訴訟行為は追認しないが、原審における訴状および原判決の各送達ならびに当審における控訴状の送達関係については異議がない。